Foto © Koichi Torimura

Episode

敷地は都心部の閑静な住宅街にあり、北側の前面道路から南側奥に向かって細長く登りながら東側にも下がる傾斜地で高低差最大5m南側はアパートに見下ろされ、西隣には集合住宅の擁壁が敷地境界ギリギリに建っている。
クライアントからの要望は多くなかったが、複雑な斜線制限と平均地盤面など計画する上で厳しい条件が揃っている中で面積に関わる強い希望を満たす必要があった。
・できる限り閉塞感のない開放的な明るい快適な住まいにしたい。
・接道間口が狭いながらも2台の車を置けるようにする。
・できるだけ面積を確保してほしい。
・音楽が聴ける落ち着いた空間がほしい。

Planning

面積を最大限確保するために地下を設けることになったが、最上階の2階以外の居室は地下に埋まることになる。そのため地下であることをマイナスのイメージとは捉えずに、自然の渓谷に習い、地下に落ち着いた詩的な光が降り注ぐような構成を採ることにした。
反対に最上階の2階は屋根の傾斜を工夫しプライバシーを確保しながらトップライトとハイサイドライトを設け、南側敷地の庭、北側屋上の庭園を設けることとで明るく風も視線も抜ける、自然に囲まれたツリーハウスのような開放感のある階となり、上階と地下で自然の谷のようなコントラストのある高低差をつけることにした。

◎渓谷のような階段ホール
斜面に沿わせてスキップさせることで、地下をつくるために搬出する土量を抑えながら、建設のし易さにも配慮した。全体で6つあるスキップした居室を切れ目のなく連続させ、その間を垂直に貫く高さ10mの階段吹き抜けを通して2階に設けたトップライトやハイサイドライトから自然光が地下に注ぎ光のグラデーションができる。

◎ツリーハウスのような開放感
解放案のあるリビングダイニングのドーム天井中心にトップライトを設け、連続する空間の熱環境の調節にも利用している。天井の傾斜はそのまま北側の屋上に向かって斜線に沿って登り空を見上げるハイサイドライトに複雑に繫がり光を反射する。
リビングのある敷地の奥側はアパートやマンションから見下ろされる関係にあるため、プライバシーを確保しながら抜けのある開放感を実現する為に、南側の庭に対しては軒を低く抑え傾斜した地形をそのまま法面の庭として残した。また最上階をガラスの仕切りが一部あるだけのワンフロアとすることで、長手方向へ視線が抜ける開放性を確保した。

Environment

3層の建物面積の半分が地中に埋まることから、地下から最上階、屋上までの環境の違いを積極的に活用しながら制御する計画とした。地下から最上階まで繋がる吹き抜けを循環する換気システムは、2階リビングのドーム天井のトップライト脇と地下の階段の最下段を吸入口として機械的にも送風し、夏と冬で逆転し同時に排気もできることで、心地よい温熱環境を作り出している。また地下の床下躯体に埋設された床暖房によってコンクリートに蓄熱することで、地下の湿度の問題と底冷えの解消を試みている。これらの複合的な方法によって連続する大きな空間に起こりがちな局所的な環境の変化を緩やかに制御している。

居住環境としての地中はネガティブ要素というよりは、昨今の猛暑の夏には涼しく一年を通して安定した環境である。最上階の窓から入る木漏れ日を地下から見上げると渓谷の底にいるような落ち着きを感じる。地下には明るい照明計画を施すというよりは、あえて面が自然に光っているような落ち着いた明るさを保ち、色彩計画も地下は暗めで最上階に向かうほど明るい色とマテリアルとグラデーションにすることで、より陰と陽を意識しつつどちらも魅力的な居場所として感じられるようにコントロールし、全体としてどこにいてもプライバシーを保ちつつ開放性や自然を感じられる家になった。

Foto © Koichi Torimura
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The Sunken Retreat

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Standort
東京都, Japan
Jahr
2024

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