福岡モノクローム
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 3-9-31, Befu, Jonanku, Fukuoka, 日本
- 年
- 2024
- チーム
- Principal Architect: Keiichiro Sako
- Architectural Design
- SAKO Architects
- Interior Design
- SAKO Architects
- Lighting Design
- SAKO Architects
- Curation
- Keiichiro Sako
- Artwork
- Keiichiro Sako
地下鉄駅から徒歩3分、中高層の建物が密集する商業地域にこの集合住宅は建っている。不動産市場において標準化されたマンションの間取りは、周辺環境とは無関係に繰り返し用いられている。その結果プライバシーの確保が難しい場所では、昼夜カーテンが閉められたままとなる。内部空間とバルコニーの連続性は損なわれ、バルコニーの空間的役割が十分に発揮できない状況となっている。
この状況に一石を投じるため「最も閉じた」ファサードの集合住宅を設計した。面積参入されない屋外のバルコニーには開放率の下限が設けられている。その閾値に合わせて、白い直方体のボリューム表面をくり抜き、正方形と長方形の「ピクチャーウィンドウ」が市松状に並ぶファサードをつくった。バルコニーが半室内化されることで、内部空間が2m延長したような空間がつくり出される。住戸はこの「ピクチャーウィンドウ」を通して、街と限定的に繋がるようにした。
天井と同じ高さのサッシュにより内部空間とバルコニーが連続するようにした。これが実現できたのは、主要開口部分において逆梁構造を採用したことによる。長方形の「ピクチャーウィンドウ」において、逆梁は高さ650mm奥行き280mmの平台にもなっている。ここは強風にさらされることもないため、花壇など趣味のディスプレイをしてもらえたらと考えている。
表層を薄いプレートのように見せるため表面から150mmまでは白く塗り、その先は黒く塗り込んだ。室外機や竪樋など、集合住宅に付きものの要素はプレートの奥に隠されている。
プレートは20mm幅の黒い目地により、「ピクチャーウィンドウ」と同様に正方形と長方形のピースに区切られている。実際には吹付タイル仕上げであるが、アルミパネルのようなソリッドな仕上がりに見える。
タイルや打ち継ぎの目地とも異なる目地の入り方はビルディングタイプをも分かり難くしている。昼間は「ピクチャーウィンドウ」の奥にあるサッシュの存在すら感じられない不思議な外観となり、夜間は住戸から漏れ出した光により白いプレートの断面が浮かび上がる。抽象的でアノニマスなボリュームに仕上がった。
1層の外壁仕上げは杉板を用いた打ち放しコンクリートとし、上階の白いボリュームを支える基壇とした。鋭角な敷地の先端部分は船のへさきのような形状とし、2階レベルに桜の木を植えた。交差点からは心和むアイキャッチとなっている。
エントランスホールは、基壇を掘り込んだトンネルのようなアプローチの先に位置する。白と黒で統一されたエッジの効いたギャラリーのような空間とした。水と生命をテーマとした12枚の絵画のキュレーションと、錫を用いた4つの立体造形も建築家の手による。
細部まで「モノクローム」で統一された建築は、洗練されたライフスタイルを演出する新たなランドマークとなった。