北傾斜のコートハウス

東京都町田市, 日本
写真 © Koichi Torimura
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写真 © Koichi Torimura
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建築家
廣部剛司建築研究所
場所
東京都町田市, 日本
2015

もともと建物があった痕跡のない手つかずの傾斜地。北東に向 けて斜めに下がった敷地を訪れた時に感じたことは2つあった。 1つは土を動かす仕事の難しさや傾斜地で高度斜線が掛かってい ることから来る法規制の複雑さといった「困難」を。 そしてもう一つは南下がりの傾斜地ではないので計画自体は難し いけれども、敷地の上部からの陽光を柔らかく受け止める建築に 対するある種の「期待感」だった。

設計の期間を通して地盤面と建築のボリューム(レベル)との 関係がずっと検討されていったのは「困難」の部分で予想されて いたこととはいえ、かなりギリギリの可能性を延々と模索する作 業だった(たとえば、2階南側個室のFLが下がっているのは渡り 廊下のヘッドクリアランスを確保するため)。

傾斜地を切り開いて、生活空間となる床を作るためには擁壁を 作って土留めをする必要がある。ここではその擁壁と建築をいか にして「一体のもの」として設計するのかということがテーマだ った。実際は擁壁に求められる機能と地上の木造部分のそれとは 構法的にはかなりの距離感がある。土圧を受けるコンクリートの 壁と木組みの「家」。その関係を検討していくうちに実はその 「間」にこそ糸口があるのだと気付いた。「間」を開いていって 中庭的な空中庭園を配置したときに、それぞれの生活空間に敷地 上部から注ぐ柔らかな光と風を届け、お互いに気配を感じ生活で きる関係を組み上げることができるだろう、と。南側に離れのよ うな個室を配置、その間に中庭を配することで奥行きが深くなり すぎず、向き合って<共に暮らす>感覚がもたらされるだろうと 考えた。

また、領域感を曖昧にするために、木造外壁部分も擁壁部分も 同じ塗壁で仕上げ、リビング側は特注の全開口サッシュを採用し ている。これによってテリトリーが広がり、建ぺい率を超えたボ リューム感がもたらされる。

敷地が南北に長いこと。断面的が3層にわたる事も感じられる ように、階段室は地下の玄関から2階まで一直線に抜けている。 ここで感じる長い距離感も家の大きさを感じ取るために一役買っ てくれる。そして、内部空間の中での「庭」のように感じられる ように光を導いた。

必要とされた諸室を配置しながら、それぞれの関係性を組み上げ る。その行為の中に「間」を介在させることによって建築自体が ひとつのテキスタイルに紡がれていくような引力を持ったのでは ないかと感じている。

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