鎌倉笹目座

神奈川県, 日本
写真 © yuji tanabe
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建築家
田邉雄之建築設計事務所
場所
鎌倉市笹目町6-7, 248-0015 神奈川県, 日本
2018
チーム
構造:ロウファットストラクチュア, 施工:小泉木材, 植栽:hondaGREEN, Low Fat Structure, Koizumi-Mokuzai

鎌倉笹目座/SASAMEZAは神奈川県鎌倉市笹目に位置する東西2棟(全8テナント)の木造2階建商業施設。敷地は鎌倉中心部から長谷の大仏へ向かうバス通りである由比ガ浜通りに面している。この通りには明治、大正、昭和初期の鎌倉別荘文化を今なお感じさせる商店がいくつか点在する。それら商店の多くは二重屋根/二重庇を持つファサードで、垂直に伸びるビルディングタイプとは異なった、町のスケールをつくりだしている。

そこで今回の建物のファサードにも、角度や視線の高さによって内部が見え隠れする二重屋根/二重庇を設ける計画とした。計画当初は竣工時に敷地を分割して建物を売却することも考えられていたため、全体としてはコートヤードを形成しながらも分割が可能な双子のような2つの建物を配置した。

延床面積はどちらも約32坪ほどで、尺寸モジュールを用いながらも敷地形状に合わせることで2棟の平面形は干異なる。しかしそれぞれの建物の屋根勾配の水下を両隣地側に設けることで一棟のような一体感をつくりだしている。またパサージュやコートヤードを挟んだ2棟の開口部を平面的に同じ位置に揃えることで、隣棟への繋がりや広がりもうみだしている。

南北に長い敷地のため、コートヤードは暗く湿りやすくなりがちだが、各棟ともに長手の中央部分を平屋とすることで採光と通風に配慮した。各戸は約20㎡であり、顔の見える個人事業主が借りやすい(賃料が抑えられた)広さとしている。

内部空間には構造材の見える化(オフセット柱+長押)により、各戸に異なるテナントが入居しそれぞれがインテリアデザインを施したとしても、建物全体の統一感を保つことができる。鎌倉時代までに多く見られた和様建築において、長押は現在のような装飾的な意味合いで取り付けられていたわけではなく、柱を前後から挟み込んで横架材として横揺れ防止の効果を狙い用いられていたと考えられている。今回の長押はこの地においてそれを現代的に再現したかたちでもある。

また木造の屋外階段、二重屋根/二重庇、外壁にウッドデッキ等この建物で使われている屋外部分の木材は、留め方やブラケットを工夫することで更新可能な納まりとしている。今回の長押を含む構造材と塀は神奈川県の木材(ヒノキ)であり、民間の小規模商業施設でありながら地産地消に取り組んだプロジェクトである。

不特定多数の方が訪れる商業施設だからこそ、地元の森の再生に積極的に取り組む林業者と我々を含めた関係者の想いが少しでもテナントや来客者に伝わり、活動の輪が広がることを望んでいる。

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