YKK黒部堀切寮
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 富山, 日本
- 年
- 1999
撮影: 中川敦玲
黒部市の中心部の近い田園風景の中に建つ、女性社員のための独身寮である。全60室の個室には、専用のトイレ、シャワーユニット、洗面台が備えられており、共用施設として、ダイニングルーム、セルフキッチン、浴室、ランドリー、ライブラリー、和室、屋上テラスなどが設けられている。
共同の住まいである寮を安全、経済的に管理する立場にある会社と、拘束されない自由な個人の生活を求める寮生からの矛盾した要求に、いかにして折り合いをつけるか。若い社員達の中にある、個人の生活を他人に干渉されたくないと思う気持ちと、同僚とコミュニケーションをとりたいと思う気持ちを、どのようなかたちで共存させるか。これらの相反する問いかけは、現代の多様化しつつある生活環境の中で、社員寮という住まいの形式に対して発せられる本質的な問いと思われる。
この建物では、空間を〈つつむ〉ことと〈ひらく〉ことを同時に試みている。まず建物全体を、一枚の連続するプレートによって〈つつむ〉ことで、内外の境界線を明快にしている。これは、黒部の変化に富んだ気候において、生活空間をコンパクトに確保することや、女子寮ということで特に求められた安全管理などに配慮したためである。同時に、共用部分を積極的に〈ひらく〉ことによって、内部空間と外部空間、内部の共用機能相互に開放性、流動性、連続性を持たせようとしている。このように〈つつむ〉ことと〈ひらく〉ことをバランスさせることで、安全で快適な共同の住まいの中に、個人の自由な生活と他人との開放的な関係を同時に実現することが可能なのではないかと考えた。