写真 © Makoto Yoshida
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GILIGILI

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場所
神奈川県川崎市, 日本
2012

敷地は、東急東横線・新丸子駅の東口商店街を抜けた綱島街道沿いにある。綱島街道の拡幅によって奥行き5Mほどの細長い空地が街道沿いに残った。道路幅員が25mと広い上に商業地域のため、周囲には10階建てほどの中高層の集合住宅が立ち並ぶ。
建て主からの要望は、6階建てで1階に駐車スペース、2〜6階は賃貸スペースを含んだ住宅、可能ならば屋上も作りたいとのこと。また、敷地が17坪と小さいので縦方向の生活を楽しめるようなプラン、住宅は風抜けがよく明るい住宅であることはもちろんだが、敷地の前面道路が4車線の交通量の多い道路なので、車の騒音と振動を軽減してほしいとのことだった。
そこで、計画では2・3階を賃貸スペースに、その3階までをRC造として車の振動と騒音を遮断し、その上にプランが自由になり、壁が薄く出来るスチールパネル構造の住宅スペース3層+屋上を載せるという大枠の構造形式を決定した。また、建物の下層3層をRC造とすることでこの地域にみられるゲリラ豪雨による水害対策と3.11以降の津波対策に憂慮した。

スチールパネルは75×450×4.5(6.0)の軽量溝型鋼で、「恵比寿の住宅」で実証済みだが、通常の鉄骨造に比べ外壁を薄くできる上にパネルでジョイントしていくので、遮音性と気密性に優れている。
1階は駐車スペースと玄関、EVで一気に4階の居住スペースと繋がる。4階EV玄関、5階リビング、そしてペントハウスまで繋がる直通階段、プランの四隅に吹抜けを設けることで住居全体に縦方向の空気の流れをつくり、住戸内の隅々に風が流れ、上部から光を階下にまんべんなく届くように計画した。
また、4階の和室を離れにして建物を貫通する風道をつくり、そこに面する和室と水回りに光と通風を確保した。
RC造と鉄骨による2段構造は、構造形式の違いによる意匠表現ではあるが、中高層マンションが建ち並ぶ街並に変化を与え、開口の抜けや大きさを調整することで周辺の重箱を重ねたような単調で画一的な街並みに豊かな表情を提供し、文字通りコンクリートの街並に軽快な風道を確保できればと考えた。

□機能性、デザイン性、経済性、独創性等
軽量溝型鋼によるスチールパネル工法は、3階ほどの住宅規模の実例しかなかったが、今回の提案によって6階建てプラスPH階までの中高層建築が実現できた。スチールパネル工法は構造体を薄くできるため、狭小の敷地でも内部空間を有効に活用する事が出来る上、組み立てたと同時に内外の仕上げを同時に施行でき工期短縮になる。
建築基準法では、耐火建築物における耐火性能を確保するためには、耐火被覆や耐火塗料を施さなくてはならないが、現状では耐火塗料の選択は認定基準の関係上難しい。今後、耐火塗料の性能向上と認定基準が整備されれば、さらにスレンダーでシャープなデザインの建築が提案できるだろうが、今回の建築によってその可能性を提示できたと考えている。

□環境、景観等に配慮
綱島街道沿いには、10階建てほどの中高層のマンションが立ち並ぶ。それらマンションは、ウサギの寝床のように同じ大きさの窓を持つ同じタイプの住戸の積み重ねで出来ている。マンションデベロッパーの用意する住戸タイプは、インテリアの大きさと間取りだけ、街に対するデザインは、せいぜい表層的な仕上げ材を何にするか程度である。
今回の提案では、さまざまな大きさや形の開口部や風道を建物自体にいくつか設ける事で、住宅自体の環境(プライバシーの確保と開放性)を会得するだけではなく、街に対してリズミカルな表情を提供し、抜けがあることで街のビル風を軽減し自然な風を少しでも近隣住居や通りに緩やかに通そうというものである。

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