大分銀行赤レンガ館 空間再生
Japan
© Yosuke Harigane
「利他的な文化から生まれる建築、空間、地域を創造し、持続可能性の高い文明への転換に寄与する。」
現代の資本主義社会は、個人も企業も自己の利益の最大化を追求し、それによって社会が最適化されるという前提の「利己主義(egoism)」的なパラダイムに基づく社会といえます。産業革命から20世紀にかけて、紆余曲折を経ながらこのパラダイムの元に世界は大きく変化してきました。しかし一方で、グローバリゼーションが極度に進む情報革命以降の現代では、最適化と言えるようなバランスは崩れ、気候変動や極端な経済格差など人類史的に重要な課題が山積するに至っています。建築や都市は社会の在り方が物質化されたものと言えますが、「利己主義」的なパラダイムに基づく社会と連動して作られてきた建築や都市も、地球規模の課題に直接的、間接的に関わってきており、大きな曲がり角に差し掛かっています。
フランスの論客ジャック・アタリ氏は「利他主義(altruism)」の重要性を説きます。他者を利する行動が巡って結局自己を利し、それが連鎖して全体が利せられるという考え方です。私たちは「利他主義」的なパラダイムに基づく社会づくりと、そのための建築や空間づくりが必要だと感じます。それが生まれることで他者を利するような建築や空間づくりと、それにより形作られる地域づくりを目指します。
現代の文明を可能にしている要素として、莫大な量の化石燃料があり、大量の再生不可能廃棄物の発生を許容する人々の意識と社会があります。ある程度までは化石燃料の使用も廃棄物の処理も、地球は許容できていたのかもしれません。しかし、今日はその限界を超えてしまったと言えます。21世紀前半は、この状況を転換してゆかなくてはならない時代です。あらゆる分野からこの課題に取り組む必要があります。そのためには教条を掲げ押し付けるだけではうまくいかないでしょう。人の意識や行動を変えて文明を転換してゆくためには、文化の力が必要だと思います。新たな文化を生み出し、日々の活動や暮らしの中に楽しさを伴って受容されていく必要があります。人々の活動や暮らしのフィジカルな拠り所となる建築や地域の実空間は、その為の重要な要素になります。他分野の方々と連携しながら、創造と交流の楽しさを伴うやわらかい存在としての建築や地域の空間づくりを通じて、新しい文化を生み出し、文明の転換に寄与して行きたいと思います。
- Category
-
- arkkitehdit
- Location
- Oita, Japan
- Employees
- 7
- Website
- dabura-m.info
- Founded
- 2015