土田拓也／no.555 一級建築士事務所

東側には電車が走り、南側には通りの多い道路と大きなマンション。

施主との雑談の中から、ご夫婦共に「空を眺める事が好き」という、抽象的だけど、なんとも素敵すぎる言葉が印象的で、周囲の雑踏から落ち着いた気持ちで自然に空(SORA)が眺められた幸せだろうとぼんやり思い描いた。

スタディを続ける中で、普段使いの部屋とそれほど日常的に使わない部屋をゾーン分けし、その分けた間に、光と風を導く路地(アレイ)を設けることが自然だと感じていった。そのアレイによって、北側にある祖父の家の庭へとつながりを感じるようになり、建物全体は回廊的な構成にもなる。内部でも、その回廊感は存在させ、水周りのコアを中心に構成されている。

アレイは、空間に奥行きとゆとりを生み、そこではBBQをしたり、何気なくお茶をしたり。上部は屋根がかかっているものの大きな吹き抜けが存在し、夏には程よく日差しを遮り、冬には奥深く暖かい光を送り込んでくれる。雨の日でも歩行ができ、それでいて雨水の落ちる光景も感じれる。そして、綺麗にトリミングされたSORA。

ちょっとした操作で、家族は周囲の雑踏から逃れることができている。家族は忙しい日々の中で、貴重なオフタイムをそこで過ごすだろう。