Takarazuka Huts
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- 2018
- 設計
- ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ
- 構造設計
- 満田衛資構造計画研究所
- 造園
- 荻野寿也景観設計
- 施工
- ビームスコンストラクション
敷地全体を庭と見立て、おおらかな居場所・風景をつくる
家族とアウトドアで過ごすことの多い友人が、散歩中にこの敷地を見つけた。敷地より下の傾斜地は、宝塚市が緑地としているため、大阪平野への眺望は半永久的に確保される。8.5mの高度差を持つ傾斜地(同時に北側前面道路から最高高さを3m以内にする建築協定もあった)に、子供が遊べるプライベートな庭を確保したい、という要望を組み込み、敷地全体を庭と見立てて設計がスタートした。
設計にあたり、これまで訪れたギリシャやモロッコ、アルジェリアの傾斜地集落も参照した。集落の魅力は、地形や給排水の与件に無理をせず、近隣住居との距離感をつくりだしていると同時に、結果的におおらかな半屋外空間が出来上がり、生活の風景を形成していることと考えている。今回の設計でも地形や友人家族の暮らし方に緻密に寄り添いながら、結果的にはおおらかな居場所が出来るように心掛けた。
この敷地は傾斜の下側に下水敷設済みなので、擁壁として土圧を受けるコンクリート躯体を出来るだけ低い位置に設置し、水回りと寝室を配置した。その躯体上を屋上テラスとし、構造としても有効なブリッジでLDKと繋ぐ。ブリッジの周囲には、アカマツやフユザクラ、アオダモの木立、この傾斜地の掘削時に採取した石と砂利で作庭し、ブリッジを行き来する楽しみを増やし、周囲からのプライバシーを守る。
リビングダイニングのボリュームを110°に開いていることは、室内側からの視界の広がりをつくると同時に、庭や周囲の風景を家の一部として取り込む効果がある。北側道路からは小屋が分散しているように見えるが、内部空間では岩窟住居のようにすべてが繋がっている。リビングの上部には子供部屋とワークスペースがあり、その2層分の小屋のボリュームは屋上テラスへの西日や、近隣からの視線をカットする役割も持つ。
どこで何をしようか、をこの場所を使う人が自分の気持ちで決めていける空間がおおらかな居場所だろうと考え、公の施設であってもユーザーと敷地と対話をしながら設計をしている。今回は友人家族の日々の暮らしが楽しくなるように、友人家族、造園、施工、構造の皆で一緒に考えて作り上げた。友人の子供たちが集まった際には、内部のみならず傾斜地全体に散りばめた庭を、自然の遊具として楽しんでいる風景は、設計者の想像を超えた使われ方だった。この地形に練り込まれた小屋によって生活の用を満たしつつ、結果的に出来た居場所、風景が、今考えていることのひとつの到達点を見せてくれたように思う。
設計: ジオ-グラフィック・デザイン・ラボ
構造設計: 満田衛資構造計画研究所
造園: 荻野寿也景観設計
施工: ビームスコンストラクション
用途: 個人住宅
構造・規模: 木造・鉄筋コンクリート造 地上3階建
敷地面積: 320.41㎡
建築面積: 98.61㎡
延床面積: 221.43㎡