畝森泰行建築設計事務所

富山県高岡市に建つ平屋の住宅である。古い街にある奥行きのある敷地で、南北には隣家と倉庫が迫るように建っている。建て主は夫婦と幼い姉妹で、閉じた中庭をもちつつ明るく快適な暮らしを求めた。また近くに流れる川からの浸水の懸念もあり、加えて北陸地域特有の厳しい気候（深い積雪や日照時間の短さ、さらに湿度の高さなど）を考慮する必要があった。

建物は地面から約700mm離した高床式の構成である。浸水深を避け、中庭や周囲への通風、積雪を考慮して建物全体を少し持ち上げている。一部で床の高さを変えながら部屋ごとに平面をずらし、また屋根も上下させた。様々なところに窓を開け、隣家を避けながら光を取り込み、足下を視線と風が抜けていく。地面に近い縁側のような廊下や物見台のように宙に浮いた子供室、広がる地面と空を同時に望むリビングなど多様な環境との距離、関係を空間化することを目指した。

構造はRCと木の混構造である。柱状改良からそのまま伸びるようにRCの柱をつくり、木の屋根梁を支える。その梁から床を吊り、足下を開放した。電柱のような丸柱と室内を横断する大梁、そこに細いスチールの吊柱が時々に現れる。異なる素材とスケールをもつ構造材が縦横に行き交い、広がる地面の上に浮くように、しかし確かに建つ。

この街には数段のステップを経て玄関に至る家が少なくない。重い雪が降り積もり、灰色の空と雨が続く冬の厳しさ。その日々から離れるように、この住宅も地面から少しだけ距離を取る。基礎のない地面はこれから手を加えられる大きな余白でもあり、それがこの場所の明るさと自由さに繋がるのではないかと考えた。